2015年5月29日金曜日

ロミジュリと恋愛資本主義。ボードリヤール。

一番目の現代版ロミオとジュリエットの脚本は、
新宿伊勢丹のデパ地下を舞台に、
スイーツ好きなOLがショートケーキの苺との恋愛を妄想する、
恋愛資本主義をテーマにした物語となった。

最初は、不倫、教師と生徒、近親愛、同性愛など、
障害のある恋愛をいろいろ考えたのだけど、
そういう重たい人間模様を10分くらいの作品に納められる自信がなく、
リアルな社会構造を放棄した脱社会的な設定を選択することにした。
というのはまあ後付けで、「女子と苺」という少女漫画みたいなアイデアが
ロミオ役の男性から提示されたのが地味におかしくて使わせてもらったのだった。

「恋愛」とか「純愛」とかいうワードに何となく胡散臭さを感じている。
一時流行った「純愛ブーム」にはまるでついていけなかったし、
どちらかというと、メディアや電通によって恋愛が商品化していく
純愛ブームの現象そのものに心を奪われた。
結果、恋愛資本主義をテーマにすることになった。

***

女「私は商品を眺めて眺めて、眺めまくる。なんていうんですか、こう、
まるで宝石みたいに並べられたスイーツ達に、私の胸は高鳴るわけです。」

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作品を書くうえで、
ボードリヤール『消費社会の神話と構造』にあるこの文章をよく参考にした。
「今日では純粋に消費されるモノ、
つまり一定の目的のためだけに購入され利用されるモノはひとつもない。
あなたの周りにあるモノは何かの役に立つというよりも
まずあなたに奉仕するために生まれたのだ。」

殺伐としていてなんだかイビツなロミオとジュリエットになってしまった。

あ、でも、そうそう、女子と苺という設定は、
「あなたを食べたい」「あなたに食べられたい」のやり取りになって、
思いのほか官能的であった。
プラス俳優の演技により大変生々しい作品になった。

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苺「彼女は僕を小さな口の中に押し込めて、幸せそうに頬張りました。僕は咀嚼され、飲み込まれ、胃液に溶け、彼女の一部となりました。」

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課題から多少ずれてしまった内容だったので酷評ではあったけど、
いつか長編にして上演したいほど、お気に入りの作品となった。

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